解散・清算の税務

TKC経営者塾24年7月20日(於:すみだ産業会館9F 第3会議室)
事務所作成資料

会社を解散しようと考えるとき

会社が休業状態になって数年間活動していない場合、もう会社を利用しないのであれば、 会社を解散するのもいいかもしれません。そのまま会社を存続させると、代表者に相続が あったりすると後であわてて解散清算をすることになります。

仮に納税が発生することが予測されるならば、躊躇があるかもしれません。 清算、結了の手続きまでに時間がかかります。司法書士への支払も掛かります。いろいろ考えて 悩むよりは、会社をそのまま休眠させておくのもひとつです。
 銀行借入など債務超過になっていて、銀行から自宅の売却を迫られているケースを考えてみましょう。 債務を弁済することが困難であれば、個人再生法を検討してみることです。個人再生法では、債務額を 1割まで圧縮できます。この1割を3年で賦払い返済できれば、再生が可能です。
個人再生については、弁護士や近くの法テラスで相談してみましょう。

1. 会社の解散には清算、特別清算、破産の3つがある。


清算:会社の解散により清算手続きが開始される。つまり会社業務の中止、後始末を行い債権の取立て及び債務の弁済をして株主に残余財産の分配をするもの。
破産:破産会社においては、裁判所から選任された破産管財人が会社財産の管理処分権限を有するため、開始決定後の法人税の申告についても破産管財人が行う義務があるとされる。破産では、会計帳簿が散逸していたり、相当の従業員を解雇したため破産前の法人税申告を適切に行っていないことがある。
特別清算:清算の遂行に著しい支障があるとか、債務超過の疑いがあるときは清算人の申し立てにより特別清算が開始される。  破産手続では。裁判所が選任した破産管財人によって清算事務が遂行されるのに対し、特別清算手続では手続開始後も清算人が清算事務を遂行するため事業の連続性や会社の意向を反映した処理が可能です。  破産管財人報酬がかからない分費用が低廉です。
解散事業年度の確定申告書、清算中の事業年度の確定申告書 各事業年度終了の日の翌月から2ケ月以内に 税務申告書作成、財産目録作成 平成22年10月1日を境に、清算の税制が、財産法から損益法へ変わりました。
平成22年10月1日 9月30日以前 財産法
清算所得に適用 残余財産なければ課税なし 10月1日より以後
損益法 当該事業年度の所得金額に課税 所得があれば課税される 資産超過又は債務超過関係なし

2.清算中の各事業年度終了の日の翌日から2ケ月以内に税務申告書を作成、提出する必要

清算株式会社は決算事務が終了したときは決算報告を作成する。
 決算報告の記載事項
① 債権の取立て、資産の処分その他の行為によって得た収入の額 ② 債務の弁済、清算に係る費用の支払いその他の行為による費用の額 ③ 残余財産の額 ④ 1株当たりの分配額
3.解散日現在の貸借対照表および財産目録
平成22年10月1日以降の解散については新法が適用され、解散の日の翌日以降も所得計算は継続企業と同様の損益法となるため「清算事業年度予納申告書」や「清算確定申告書」という特別の様式は用いず継続企業と同じ通常の確定申告書および別表を用いる。
解散事業年度の税務申告
 解散の事業年度 → 1年に満たない事業年度             月割調整
(1) 月割調整 ① 減価償却 ② 繰延資産 ③ 交際費 ④ 寄附金 特別償却  新たな設定できない 租税特別措置法上の準備金  新たな設定できない 引当金  できる 圧縮記帳 できる 調整項目
①  中小法人の軽減税率適用範囲 ② 留保所得の定額基準 ③ 法人住民税均等割

4.解散の日が平成22年10月1日以後の場合(新法適用)
清算確定した場合

解散日の後解散申告書作成する。 残余財産が確定したら、清算結了の申告書を作成する。 同時に司法書士に依頼して解散の登記、清算結了の登記を行います。
所得計算(清算結了年度) 損益法 (1) 継続企業の取扱と同じ点
減価償却費 認める
交際費 損金不算入
(2) 継続企業の取扱と異なる点
適用がないもの(準備金、圧縮記帳)
特別償却 認めない
租税特別措置法上の準備金 設定できない
圧縮記帳 適用できない
収用換地 適用不可
留保金課税 適用なし
 期限切れ欠損金の適用がある場合の計算
 残余財産確定時の貸借対照表
資産     100 負債 190
資本金     10
(債務免除益 90)
欠損金合計 100
うち、青色 50
うち、期限切れ 50 損益法の場合 債務免除益  90 青色欠損金  50 期限切れ欠損金  40 課税所得   0

② 期限経過欠損金の適用

 新法では、損益法により清算中の各事業年度を切っていくため清算中の事業年度の確定申告書により納付した税金は残余財産確定後に作成・提出される確定申告書において税額控除されることはないため、清算中の事業年度でいったん納付した法人税が残余財産確定後に戻ってくることはない。清算中の事業年度の確定申告書において欠損金の控除により課税所得が発生しないように対応できるのかどうかが重要な問題となる。  しかも青色欠損金でカバーできないときに、一定の要件のもとで期限経過欠損金の使用が認められる点が最大のポイントである。

6.実在性のない資産があるとき
 貸借対照表に実在性のない資産があることが分かった。 ① 過去の帳簿書類を調べて、その資産の計上内容がわかったとき・・・ 適正な処理に修正を行う。その原因の生じた事業年度の欠損金となる。(青色、又は期限切れ欠損金) ②  実在性のない資産の計上根拠等が判明しないとき、実在性のない資産の帳簿価額に相当する金額は欠損金とすることが適当と考えられる。
7.仮装経理との関係
 内国法人の提出した確定申告書に記載された各事業年度の所得の金額がその事業年度の課税標準とされるべき所得の金額を超えかつその超えるべき金額のうちに事実を仮装して経理したところに基づくものがある場合において 税務署長がその事業年度所得に対する法人税について更正したときは、清算中の各事業年度についても「仮装経理に基づく過大申告の場合の減額更正に伴う法人税額」の5年間にわたる税額控除は継続していく。(法法70条)  残余財産が確定したことを事由として、控除しきれない残額があったとき、控除未済額の全額が還付される。(法法135条3項)
8.平成23年度税制改正
  欠損金の利用制限
① 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度及び青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越控除制度における控除限度額について、その繰越控除をする事業年度のその繰越控除前の所得の金額の100分の80相当額とし、連結欠損金の繰越控除制度における控除限度額について、その繰越控除をする連結事業年度のその繰越控除前の連結所得の金額の100分の80相当額とする。 (イ) 中小法人等については、現行の控除限度額を存置する。 (ロ) 特定目的会社、投資法人、特定目的信託に係る受託法人及び特定投資信託に係る受託法人で支払配当等の損金算入制度の適用対象となるものについては、現行の控除限度額を存置する。 (ハ) 会社更生等による債務免除等があった場合について現行どおり欠損金の損金算入ができるようにする等の所要の整備を行う。 ② 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越期間、青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越期間及び連結欠損金の繰越期間を9年(現行7年) に延長する。 法人税の欠損金額に係る更正の期間制限を9年(現行7年)に延長する。 法人税の欠損金額に係る更正の請求期間を9年とする。

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