法人税別表4、5の作成の仕方

申告書別表四


決算利益から課税所得金額を誘導的に計算する。 申告書別表5
利益積立金額及び資本金等の額の期中の増減額の 内訳と期末残高を表示する
法人の決算利益 + 加算 - 減算 = 仮計
申告書別表4
① 課税所得金額の算出機能
② 特定同族会社の留保金課税の計算機能としての    留保金額算出機能
③ 利益積立金額の計算の基礎機能
  これは申告調整の金額について、その処分(留保又は社外流出)   の区分けを行い、その事業年度に発生した利益積立金額を   算出するという機能です。
当期の課税所得は別表四で総額を留保と社外流出の2つの欄に分けて 計算する。利益積立金額はこの留保欄に残った金額である。 留保とは当期利益(純利益)のうち、利益処分で配当や役員賞与として 社外流出した以外の金額及び申告調整により加算及び減産されて社内に 蓄積された金額をいう。
 社外流出とは会社の内部に蓄積されず外部に払い出されたことをいう。 これには利益処分によって支払われた配当金や役員賞与金、損金経理された 役員賞与の額、交際費等の損金不算入額、寄付金の損金不算入額、損金の 額に算入した附帯税、加算金、延滞金及び過怠税等がある。これらは実際上も 純財産の減少という形で社外へ流出したもの。
しかし受取配当金等の益金不算入額 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除及び収用換地等や用地買収 等の所得の特別控除額も、社外流出扱いとしている。
これらは実際は純財産の 減少を伴わない項目で、社外流出したものではない。課税方式や経済社会政策の 理由により課税処理を見合わせ、減算処理の社外流出扱いとすることによって 結果的に当期の利益積立金額を構成することにしている。

社外流出


留保金額として計算された額は当期の利益積立金額の増加額となる。
留保金額=(課税所得 - 社外流出項目)+ (社外流出扱いとする項目)
社外流出扱いとする項目
課税方式によるもの
受取配当の益金不算入、所得税額及び欠損金の繰戻しによる 還付金額等、青色申告事業年度の欠損金の繰越控除 経済・社会政策によるもの
収用換地等や用地買収等の場合の所得の特別控除、新規取得 土地に係る負債利子額の課税、技術等海外取引に係る 所得の特別控除
純財産の減少を伴わないのに社外流出扱いとする項目は処分欄の社外流出の 記入欄に「*」印を付し、課税外収入として通常の社外流出とは区別します。
社外流出③欄は社外流出の意味を表す小さいマスの記入欄と金額記入欄に 分かれているが
このうち小さいマスの欄はその社外流出項目が「配当」 「*」「その他」の3つのうちいずれかに該当するかを正しく記入することに なっている。
 別表四の仮計22、合計28、総計31、差引計37、所得金額 又は欠損金額39のそれぞれの欄の社外流出③への記入は「*印」 (減算合計)と「*以外のもの」(加算の合計額)とに分けて二段書きで 行うことがルールとなっている。

決算調整事項


決算調整事項は、これを法人の決算において処理することを要件とするもの 法人税法上、「損金経理により・・・・したときは、所得の金額の計算上損金の 額に算入する。」と規定されている条文が数多くある。
損金経理とは「法人がその確定した決算において費用又は損失として経理する こと」をいい、これらの損金経理が要求されている項目については申告調整によって は損金の額に算入できない。   決算調整とは損金経理を要求されている項目について決算書類を作成する 段階で費用又は損失として経理をすることをいう。


決算調整事項


損金経理を要件とするもの
減価償却資産や繰延資産の償却費の損金算入
使用人兼務役員の使用人賞与の損金算入
役員退職給与の損金算入
各種引当金勘定への繰入額の損金算入
少額な減価償却資産や繰延資産の一時の損金算入
特別の事由がある場合の資産の評価損の損金算入
一定の経理によるもの
割賦基準の適用
延払基準の適用
工事進行基準の適用
損金経理の他利益又は剰余金の処分によるもの
国庫補助金、工事負担金、保険金、収用等、特定の 資産の買い替え等により取得した固定資産の圧縮額の 損金算入
圧縮記帳に係る特別勘定への繰入額の損金算入
各種準備金の積立額の損金算入
法人の選択による経理
使用人賞与の損金算入
寄付金の損金算入

申告調整事項


申告調整事項には、任意的調整事項のように法人の決算上での 処理を要件とせず申告書で申告調整するか否かは法人の意思に委ね 申告調整を行うことによって初めて法人が利益を受けるものとし、もし法人が 申告において調整しなければ、やむを得ない事情がある場合を除いて税務 当局は進んで申告調整を認めない事項。
必須的調整事項は法人が 決算で処理していない場合には申告書で必ず調整しなければならないもので、 申告書で調整しない場合には税務当局は進んで更正・決定をする事項。
申告調整事項
任意的調整事項
益金不算入
受取配当等の益金不算入
欠損金の損金算入
資産整理に伴う私財提供益があった場合の欠損金の損金算入
特別控除<> 収用等その他資産譲渡の場合の所得の特別控除
技術等海外取引にかかわる所得の特別控除
その他の損金算入<> 新規取得土地等に係る累積損金不算入負債利子額の 損金算入
税額控除
所得税額や外国税額及びその他の税額控除
必須的調整事項
益金不算入
還付金、合併差益金のうち被合併法人の利益積立金額から 成る部分の金額
損金不算入
寄付金、交際費等、過大役員報酬、役員賞与、過大役員退職給与
法人税等、税額控除される所得税額、税額控除を選択した外国税額
益金算入
税額控除選択の外国子会社の外国税額、特定外国子会社等の 留保金額の益金算入
限度超過額
圧縮記帳、引当金、準備金、償却費等の税法上の限度超過額
事実に反する経理等
公正妥当な会計処理基準や事実に反する経理等の修正

別表五(一)


利益積立金額を計算する別表五(一)は、過去に蓄積した利益と当期で獲得した 利益処分後の留保金額を計算した明細書。
 税務上の利益積立金額は 基本的には貸借対照表の純資産のうち利益準備金と剰余金の合計額から未納の 法人税と住民税の額を控除した額にあたるが、それ以外にも別表四で申告調整された 留保項目や法人税や住民税の確定未納税を超過して計上された納税充当金 も含みます。
 また、別表五(二)は別表五(一)のうち未納法人税等と納税充当金の 内訳を明らかにした明細書となっている。

利益積立金の内容


資本等取引によって生ずる収入又は支出の額は課税所得の計算上、益金の額 又は損金の額に算入されない。  資本等取引とは法人の資本等の金額の増加又は減少を生ずる取引、いわゆる 資本取引と法人が行う利益又は剰余金の分配、すなわち利益配当をさす。 資本とは資本金と資本積立金の合計額をいい、これらの増減は純資産の増減を きたすが、これは法人と株主等の出資者との持分の増減に関わる取引であるので 益金又は損金の額から除外することとしている。

利益積立金額の法人税法上の定義


利益積立金額とは、法人の所得の金額で留保している金額をいい、過去 事業年度及びその事業年度開始の日以降において 第一号〜第七号の金額を合計する。 第八号〜第十二号の金額を減算する。
一 イからチまでに掲げる金額の合計額からリからルまでに掲げる   金額の合計額を減算した金額
イ 所得の金額
ロ 受取配当等の益金不算入額
ハ 外国子会社から受ける配当等の益金不算入額
ニ 受贈益の益金算入の規定による益金に算入されない金額
ホ 還付金の益金不算入に規定する還付を受け又は充当される金額   (法人税、地方税)
ヘ 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越の規定により   損金の額に算入される金額
ト 法人課税信託に係る所得の金額の計算に規定する資産の帳簿   価格から負債の帳簿価格を減算した金額
チ 医療法人の設立に係る資産の受贈益等に規定する金銭の額   又は利益の額
リ 欠損金額
ヌ 法人税、法人税に係る道府県民税及び市長村民税(都民税   及び均等割)
ル 省略
ニ その法人を合併法人とする適格合併によりその適格合併に係る   非合併法人から移転を受けた資産の一定の日の帳簿価格からその   適格合併によりその被合併法人から移転を受けた負債の帳簿   価格等一定のものを減算した金額
三  その法人を分割承継法人とする適格分割型分割により分割   法人から移転を受けた資産の帳簿価格からその分割法人から   移転を受けた負債の帳簿価格等一定のものを減算した金額 <> 四  省略
五 資本又は出資を有する法人が資本又は出資を有しないことと   なった場合のその有しないこととなった時の直前における資本金等   の額に相当する金額
六 省略
七 省略
八 剰余金の配当、利益の配当、若しくは剰余金の分配
九 省略
十 省略
十一 第八条第一項第十六号(資本の払い戻し等に係る    減資資本金額)に規定する合計額が取得資本金額を超える   場合の超える金額
十二 第八条第一項第十七号(自己株式の取得等)に規定する   合計額が取得資本金額を超える場合におけるその超える金額   *自己株式の取得等により金銭その他の資産を交付した場合の   取得資本金額の合計額を超える場合にはその超える部分の金額を   減算した金額とする。
  その法人のその自己株式の取得等の直前の資本金等の額を   その法人のその自己株式の取得等の直前の資本金等の額を   直前の発行済株式又は出資の総数で除し、これにその自己株式   の取得等にかかわる株式の数を乗じて計算した金額

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